2019年8月2日 国際的な支援や対策への貢献に期待 干ばつによる世界の穀物生産被害をマップ化

農研機構は、降水量と穀物収量データを解析し、世界で初めて50kmメッシュの高解像度で、干ばつによる世界の穀物生産影響の地理的分布を明らかにした。

過去27年間に1回以上の干ばつで収量被害を受けた穀物の栽培面積は、コムギについては1.61億ヘクタール、トウモロコシについては1.24億ヘクタール、コメについては1.02億ヘクタール、ダイズについては0.67億ヘクタールだった。

また、1回の干ばつによる穀物収量減少率は、27年間の平均でコムギが8%、トウモロコシが7%、コメが3%、ダイズが7%となっている。

今回の研究成果により、過去の干ばつによる穀物生産の被害状況の把握や今後の被害量の推定が可能となり、国際的な干ばつに対する支援や対策、日本の穀物の安定的な輸入・需給に役立つと期待されている。

 

世界的に大きな問題、対策が急務

「干ばつ」は、世界の安定的な穀物生産を脅かす主な原因の一つとしてあげられており、今後、気候変動によりその頻度と強度が増すと予測されている。

干ばつによる生産被害を軽減するためには、干ばつによる穀物生産の被害量の評価とともに、予測手法や対策技術の開発・普及が重要。特に、開発途上国では、GDPに占める農業生産の割合が高い国が多いことから、これらの国における干ばつ対策が急務となっている。

国際機関や先進国が干ばつ対策資金を開発途上国などに支援する際には、これまでの干ばつによる穀物生産被害やその地理的分布についての科学的な根拠が必要となる。しかし、これまでは、特定の地域と国に限定された干ばつ被害が報告されているものの、過去の干ばつによる穀物生産被害を、全世界において同じ手法で評価した例はなかった。

農研機構は、こうした状況等を受け、降水量と穀物収量のデータを統計解析することにより、50kmメッシュの高解像度で、干ばつによる世界の穀物生産被害の地理的分布を初めて明らかにした。

 

主要穀物の生産被害の地理的分布を 50kmメッシュの高解像度で定量化

今回の研究では、干ばつによる世界の主要穀物(トウモロコシ、コメ、ダイズ、コムギ)の生産被害の地理的分布を50kmメッシュの高解像度で定量化した。

それによると、1983年から2009年までの27年間に1回以上の干ばつ被害を受けた穀物の栽培面積は、コムギについては世界の収穫面積の75%にあたる1.61億ヘクタールで、トウモロコシについては同じく82%にあたる1.24億ヘクタール、コメについては62%にあたる1.02億ヘクタール、ダイズについては91%にあたる0.67億ヘクタールだった。

また、1回の干ばつによる収量減少率は、27年間の平均でコムギが8%(ヘクタールあたり0.29トン)、トウモロコシが7%(同0.24トン)、コメが3%(同0.13トン)、ダイズが7%(同0.15トン)だった。将来(2050年)に必要な穀物量を得るためには、年2.4%の収量増加が必要と言われているのに比べると、干ばつによる収量減少率は大きな数字である。

また、研究では、干ばつによる穀物の収量減少率は、開発途上国のうち乾燥地域に位置する国で特に大きく、また、減少率には各国の経済状況が関係しており、一人あたりGDPの増加に伴って減少率が小さくなることが分かった。

さらに、今回明らかにした平年降水量と収量減少率の関係式を利用することにより、月降水量だけで干ばつによる穀物収量減少率を簡単に見積もることが可能となった。

 

国際的な支援・対策の立案の面で期待

過去の被害状況の把握や干ばつによる穀物収量減少率の予測が可能となることで、マップ化された情報をもとに干ばつに脆弱な地域が特定でき、干ばつに対する国際的な支援・対策の立案に役立つと期待されている。加えて、先立ってある地域の穀物収量減少率が分かることにより、輸入先や価格変動等を考慮することで、日本の穀物の安定的な輸入・需給にも役立つと考えられる。

さらに、今回の研究成果により、世界のどこでも降水量データ(年降水量の平均値と収穫前3ヵ月間の月別降水量)が得られれば、その地点の穀物収量被害を簡単に推定できるようになった。また、過去の降水量の観測値または将来の降水量の予測値から、干ばつによる穀物収量減少やその経済損失額が評価できるようになった。

 

穀物生産被害の監視・予測の可能性

気象庁では、2019年3月から、世界における標準化降水指数の公表を開始している。今回の研究成果に関しては、こうしたデータを活用することで、干ばつによる世界の穀物生産被害を監視・予測できるようになる可能性がある。干ばつの監視・予測が実現すれば、干ばつの影響を受けやすい国の政府や国際機関に早期警戒を促し、迅速な対応に役立つと期待されている。


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