2018年10月31日 ヤクルトが名大に寄附講座を開設 「外科周術期管理学」で新治療法の創出に期待

(株)ヤクルト本社は、外科手術など身体や精神状態に障害や負担をもたらす侵襲性の高い外科手術の術前・術中・術後の周術期における腸内環境の改善や運動機能維持の重要性を明らかにするため、名古屋大学大学院医学系研究科に「外科周術期管理学(ヤクルト)寄附講座」を10月1日に開設した。

この講座では、名大医学部附属病院などと連携し、①高度侵襲外科手術における術前の栄養療法・運動療法の導入による術後合併症発生率の低下および在院日数の短縮効果の検証、②消化器外科手術前の腸内環境と術後合併症との関連性検証、③腸内細菌が他の臓器に移行し感染を引き起こすバクテリアルトランスロケーションのメカニズム解明を目的とする研究の実施を計画している。開設期間は3年間で、寄附金額は年2700万円の総額8100万円。

外科領域において、部位の感染や、手術での侵襲に起因する感染で生じる手術後の感染性合併症が大きい問題となっている。特に消化器外科領域では、腸管への侵襲を伴う手術が数多く行われている。これにより腸内細菌のバランスの破綻やバクテリアルトランスロケーションが引き起こされ、術後の感染症合併症を発症する割合が高くなっている。

合併症の予防・治療に抗菌薬は欠かせないが、有用性が高い反面、多用による耐性菌の出現が深刻化している。そのため、抗菌薬だけに依存せず、感染性合併症の発生を抑えることのできる予防法の構築が課題となっている。

近年の臨床研究から、高度侵襲外科手術を受ける患者において、術前の腸内環境の乱れが術後の感染性合併症発症のリスクを高めることが分かってきた。また、乳酸菌やビフィズス菌などのプロバイオティクスとオリゴ糖などのプレバイオティクスを組み合わせた栄養療法(シンバイオティクス)によって周術期の腸内環境を良好に保つことにより、感染性合併症の発症を低減できる可能性が示されていることから、周術期における腸内環境の改善が術後の回復が有効である、という考え方が広まりつつある。

また、腸内環境とともに周術期の回復の重要な要因となり得るものとして、筋肉量や運動能力に注目が集まっている。これまでの臨床研究において、術前の筋肉量低下や運動能力低下が術後の合併症発症に悪影響を及ぼすことが確認されているが、術前に運動療法(プレハビリテーション)を導入することにより、手術後の回復を早めることも報告されているという。これらの結果から、術前から周術期のストレスに耐え得る身体を作り上げることの重要性が示唆されている。

これまでに、術前の栄養療法や運動療法による合併症の発生率低下や在院日数の短縮などの有用性が見出されている。一方、これら栄養療法と運動療法を組み合わせた臨床研究はほとんど実施されていない。今回の寄附講座での研究の推進により、患者の周術期における回復能の促進、合併症発生率の更なる低下、在院日数の短縮などが期待される新たな治療法の構築につながり、患者の負担軽減に大きく貢献できる可能性がある。

また、腸内環境の改善による術後感染症合併症との関連性が明らかとなれば、消化器外科手術後の短期・長期的な治療結果の改善方法を腸内環境から考えることも可能となり、「腸」が新たな治療のターゲットとなる可能性が考えられる。

さらには、バクテリアルトランスロケーションのメカニズム解明により、これを予防する方策が見出せる可能性があり、消化器外科領域をはじめとする医療の発展に寄与することが期待される。


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