京都大学化学生物学の萩原正敏教授らの研究グループは、ダウン症の子を妊娠したマウスに投与することで症状を改善する効果を持った化合物を発見したと発表した。研究成果は5日以降に米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載する予定。

研究では、どの遺伝子の異常がダウン症の症状に影響するかに着目。21番目の染色体上の遺伝子の1つが過剰に発現することで、神経幹細胞の増殖を抑えて大脳皮質の発達を遮るメカニズムを明らかにした。さらに、投与することで神経幹細胞の増殖を促す化合物「アルジャーノン」を発見。実際にダウン症の子を妊娠したマウスに、1日1回のペースで口から「アルジャーノン」を投与したところ、子どもの大脳皮質に異常がないことを確認した。迷路を使った学習能力テストでは通常のマウスと同水準の結果となっている。

■ アルツハイマー病やうつ病、脊髄損傷などへ応用の可能性も

研究グループは、ダウン症の人から作ったiPS細胞に「アルジャーノン」を加えることで、神経細胞に影響を与えることも確認。今回の成果について、脳神経が関与するアルツハイマー病やうつ病、パーキンソン病、ハンチントン病、脊椎損傷などに応用できる可能性があるとした。一方で、妊婦や胎児に使うには、社会的な合意や安全性の確認が不可欠だと指摘し、慎重に研究を進めていく意向を示している。

ダウン症は、人間の23対ある染色体の21番目が3本と通常より多くあることで起き、知的障害や先天的な心疾患などを引き起こす。確立は1000人に1人と、染色体異常の中では最も多い割合。現在では、妊娠中に母体の血液や羊水検査することで、胎児がダウン症か診断することも可能だ。ただし、根本的な治療法は現状でなく、胎児の異常が確定した妊婦の約94%は人工妊娠中絶を選択している。

京大リリースより引用