2022年3月31日 ため池の豪雨対策の効果を評価 水位の上昇を防ぐ対策の効果を可視化

農研機構は、ため池の水位の上昇を防ぐ対策の効果を可視化する手法を開発した。

ため池は、水位が高くなりすぎると決壊するおそれが生じる。このため、多くのため池には、水位が上がり過ぎないよう一定水位(常時満水位)で放流する施設である洪水吐を設けている。しかし、洪水吐の規模が小さいため池では、豪雨時に決壊のおそれがある危険な水位まで、一時的に水位が上がることがある。

このため、豪雨の前に貯水を放流したり、洪水吐の一部にスリット(切欠き)を入れたりして、豪雨の前に水位を下げる対策を行うことがある。しかし、その効果を定量的に評価し、可視化する手法はなかった。

今回開発された手法では、水位を下げる対策を行った場合に、ため池の水位上昇をどのくらいまで抑えられるのかを評価して可視化する。

豪雨によるため池の水位の上昇は、雨の強さや降雨時間の長さといった豪雨のパターンによって異なるが、開発手法では、様々な豪雨のパターンを入力条件として与え、対策の有無に対するそれぞれの水位を計算し、水位の最高値、注意が必要となる時間の長さ、その発生確率を求め、結果をグラフ(散布図)で示す。この手法を用いることで、放流する水位の設定などの具体的な対策と水位の上昇を抑える効果の関係を可視化して把握することができる。

 

豪雨時の水位上昇を抑制する減災対策が必要

全国に約15万ヵ所存在するため池は、その約7割が江戸時代以前に築造(もしくは築造年代不明)とされている。古い時代に築造されたため池は、近代的な土木技術に基づいて設計・施工されておらず、築造当時の経験的な技術により造られている。また、土で作られているため池の堤体は、貯水の浸透等により劣化が進んでいる場合もある。

古い時代に築造され、劣化、地震や豪雨による決壊の危険性がある防災重点農業用ため池については、「防災重点農業用ため池に係る防災工事等の推進に関する特別措置法」に基づき、計画的に防災工事が進められている。しかし、防災工事は計画から工事の完了までに時間を要する。このため、豪雨時の被害が懸念されるため池では、喫緊の減災対策として豪雨の前に事前放流や低水位管理で空き容量を確保し、豪雨時の水位上昇を抑制する減災対策が求められる。

また、農林水産省がとりまとめた「ため池管理マニュアル」では、「大雨・洪水時や地震時の対応ポイント」の一つとして、降雨前に空き容量を確保することで、下流の浸水被害の軽減とともに、ため池の決壊を防止する効果も期待できるとされている。また、大雨に対する対策として、事前放流や低水位管理の取組が示されている。

空き容量の確保による効果は、空き容量の大きさや降雨規模(総雨量、時間当たり雨量)とともに、降雨特性(降雨継続時間、一番雨が強い時間帯)が大きく影響する。しかし、今まで降雨特性と降雨規模を一体的に扱い評価し、可視化する手法は提案されていなかった。

 

「ピーク水位」や「超過時間」を指標に 指標値の出現頻度に基づき評価

今回開発された手法では、水位上昇の抑制効果は、計算モデルで求めた一連降雨における「ピーク水位」、水位が設定した基準水位(災害リスク発生の目安の水位)を超えている時間である「超過時間」を指標とし、指標値の出現頻度に基づいて評価を行う。

計算モデルでは、まず空き容量に対応した降雨前の貯水位を計算の出発値として設定する。次に、時系列の時間あたり雨量を入力値として、洪水流出モデルにより流域からの流出量を求め、ため池への流入量とする。また、堰の公式により洪水吐やスリットからの放流量を求め、必要に応じ他の放流量と合わせてため池からの流出量とし、両者の収支から貯水量を計算する。貯水位は貯水量Vと貯水位Hの関係式(V‐H式)により貯水量から計算し、「ピーク水位」と「超過時間」を求める。

評価の指標値は「ピーク水位」と「超過時間」の年最大値とする。指標値は値の大きさで順位付けした上で、出現頻度を発生確率として求める。指標値と発生確率の関係は、指標ごとに散布図を作成して把握する。

計算モデルに入力する雨量データは、10年に1回の確率など、求める最大の発生確率に対応した年数分のデータとし、ため池近隣での観測値から一連降雨ごとに時系列のデータとして作成する。

 

 空き容量の確保による効果の評価手法についても開発を推進

新たな手法では、取水施設の操作により事前放流を行った場合や、洪水吐に設置されたスリットから事前放流に続いて降雨中も放流を行った場合など、対策時と無対策時の指標値を同一の散布図上に表示することで、対策を行った場合による水位上昇の抑制効果や基準水位を超える時間の短縮効果についても、視覚的かつ定量的に比べることができる。

また、現在、空き容量の確保によるため池の下流水路の溢水抑止や下流河川に対する流域治水の効果の評価手法についても開発が進められている。

ため池と洪水吐(兵庫県下のため池:左)と水位が上昇して堤体が崩壊する仕組み(右)(プレスリリースより)


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